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ブッダ 大いなる旅路part1より キサー・ゴータミーの話




男たちの大和 / YAMATO [DVD]
佐藤純彌監督で戦争映画、といえば何といっても「トラトラトラ」であろう。黒澤明のもとB班監督として携わったものの、黒澤解任による以降の監督要請を断り、一緒に降りたことが良く知られる。今回はスタジオも同じ東映京都で、まさに「トラトラトラ」の仇打ちのごとき快作に仕上げたことにまず拍手である。また、呉に作られた戦艦大和の実物大(一部だけど)セットの迫力が凄い。これだけの舞台が用意されれば、俳優陣も力が入るというもの。だから最後の沖縄戦闘シーンはハリウッドもびっくりのド迫力になったのだろう。東映では過去の日本の戦争映画で最大規模、といっているが、それも納得してしまうほどだ。現代と当時をリンクさせていく撮り方は佐藤監督のホンによるものだが、ドラマ部分は戦闘の迫力に比べるとちょっと浅いかな、とは思う。でも池松荘亮の凛とした表情や、蒼井優の相変わらずの名演など見どころはたくさんある。大東亜戦争は無茶だった、というのは戦後の論評であり、当時の帝国は「負けるはずがない」と考えていた。その点でもヘンな反戦セリフなどがないことは好感であった。男はみんな「20歳までには死ぬ」と信じていたのだから。角川春樹プロデューサーも久しぶりに骨のある作品を送り出したものだ。皆に勧めたい良作である。

 

男たちの大和/YAMATO 限定版 [DVD]
太平洋戦争末期1945年4月の春。
三千名近くの犠牲者と共に東シナ海に沈んだ戦艦大和。

太平洋戦争の犠牲となった、戦艦大和の乗組員やその家族の過酷な物語。

冒頭「タイタニック」の如く、海底で撮影された大和の姿でドキュメンタリーと
して始まり、
戦艦大和の乗組員の家族役・内田真貴子(鈴木京香)と、
当時15歳で戦艦大和の乗組員だった老人役・神尾(仲代達矢)の記憶を辿る。

戦争は結局政府の上層部が起こし、国民に強制し国民が犠牲となる不条理なもの。
戦争で政府?のため、誰かを守るために死ぬ意味、生き残る意味を問いかける。
「死なんといて。死んだらいけん。」
随所に散りばめられたこの言葉は、胸を詰まらせる。

しかし、「死ニ方用意」。
戦艦大和は不条理な特攻突入の玉砕作戦へと駆り立てられる。

戦闘の映像はこれまでの日本の戦争映画の群を抜いて、迫力があり、
壮絶に悲惨に描いている。

しかし戦争映画として、まだ一つ大事なものを満足していないように思う。
それは、死ぬという事がどれほど痛くつらく苦しいものか。それを完全には表現しきれていない。
銃弾に撃たれて死ぬ瞬間の、苦悶、断末魔の恐ろしい表情。
日本の戦争映画はその死ぬ瞬間の表情を隠し、あえてなのか表現しない。

死と言うものの重さをもっときちんと表現することで、
本当の意味で戦争の悲惨さ、不条理さ、
そして生きていることの有り難さが表現されるのではないだろうか?
(一点反町演じる森脇が銃に撃たれる表情。その表情が最もそれを表している様に思う)

 

乱 [VHS]
 世界的な映画監督としての評価を不動にした一方で、その妥協のない作風ゆえにとにかく予算がかかり、東宝との関係も最悪だったという80年代の黒澤明。この映画も日本国内ではもはや予算が集められず、フランスまで行って予算を集め、25億円以上(当時)をかけて作られた。CG全盛の現代映画と違い、圧倒的な物量と綿密なカメラ・ワークが作る映像世界は、やはり圧巻。(また、仲代達也のメイクと芝居は現代ハリウッドのCGアニメキャラを超えた完成度を未だに誇っている。)こんな贅沢な戦国映画はもう撮影されることはないのだろうか、と思うと、時代劇ファンとしては少し寂しい。(当時だって「世界のクロサワ」(=なんか、嫌な響きだよね)だから許されたワガママ放題であって、邦画制作は既に惨憺たる状況だった。)

 そして、この贅沢さで映像美を裏打ちする方向性というのが、逆に90年代以降の黒澤映画の「衰え」(と敢えて言おう)を準備したんじゃないかと思う。本作はそういう意味で、物量映像美路線の臨界点なんじゃないか。

 シェークスピア「リア王」をベースにしているため話の筋の予想がついてしまうのが難点だが、人間と戦争の残酷さ・エグさが存分に描かれており、シェークスピア映画としてみても全く違和感なく仕上がっている。とにかく残酷なストーリーなんだけど、これが「悲劇」というものなのだろう。「悲しい劇」が「悲劇」だと思ってた自分の目を覚まさせてくれた一作。しかし、シェークスピアのクラオモシロさ(暗い+面白さ)に気づかせてくれたのは思わぬ収穫。

 モノクロ映画時代のファンが多い黒澤映画だが、「クロサワ」を語るなら色んな意味で避けて通れない作品。

 

二百三高地 [DVD]
文字通り、本作は日露戦争当時の
旅順攻囲軍の苦難を乃木・児玉両将軍
のやり取りを中心に、加えて
戦争に翻弄される金沢の連隊4人の
市井のひとびとの物語です。

連日のように続けられるロシア要塞への
肉弾攻撃・・・。
いともたやすく消耗してゆく兵士たち・・・。
無為無策ともいうべき乃木将軍の第三軍でした。
そこで万勇を鼓舞し戦局を打開したのが、
児玉中将でした。

乃木を替えるなと命じた明治大帝。
乃木に勝たせる事を決した児玉中将。
苦心の末、落とした旅順二百三高地から
勝利のバトンが渡り、やがて日本海海戦
の大勝利へと・・・結実するわけです。

乾坤一擲とはまさにこの事。
よくもロシアを相手に戦争したものです。
外交も戦略も太平洋戦争とは比較にならない
人物が揃っていたということです。

戦後の、乃木将軍の嗚咽が全てでした。
防人とは強くそして哀しいものだと・・・・。

是非お勧めします。







 

影武者<普及版> [DVD]
何しろあの同じ人間が三人いるというオープニングから、信玄になりそこねた影法師が風林火山の旗の横を素通りしていくラストまで、そのインパクト+ダイナミズム+格調のある映像の数々にため息の出てくるような作品だと思います。  照明はもちろん自然描写にいたるまで、既成の表現にならうのではなく、あくまでも自分流の映画表現を創りだそうとする並々ならぬ気迫に、あらためて黒澤明が映像で物語を語る作家なのだということに気付かされます。 “羅生門”がヴェニスでグランプリを取ったとき、あれは日本のエキゾチズムが西洋人に受けただけだという批評もあったそうですが、エキゾチズムを云々するならこの作品における華麗な衣装のほうがずっと上をいっていると思います。 まさに映像面に関しては動く美術品と言っても過言ではない作品だと思います。

しかしながらこの作品、映像が素晴らしければ素晴らしいほど、ストーリー上の不可思議さが浮き彫りになっていると思います。 なにしろ主人公の影法師が、何故武田家にあそこまで殉じる気になったのかが観客の方には伝わってきません。 彼が信玄に実際に会ったのはオープニングの5分間だけで、その時にも確かに信玄の持つオーラに圧倒されている様子は描かれているのですが、あれだけで一人の人間(それも盗っ人)が自分の人生そのものを他人のために捧げる気になるーという展開はちょっと無理があると思います。 結局、そういう人もいるのかなあーという、なにやら頼りなげな理由付けを強いられるので、その後のストーリー展開に感情移入することが難しく、大部分の観客は終始一歩距離を置いたスタンスで見るしかありません。 この辺は明らかに脚本の弱さに原因があると私には思えます。 過去の黒澤作品においては、このような内容上の無茶な押し付けはありませんでした。 もしこの弱点を克服して、映像面と内容面のバランスがとれていたら、ちょっと物凄い傑作になっていたのではないかと思えるだけに惜しい作品です。

 

遺し書き
 シアター・コクーンで、仲代のファルスタッフで、無名塾が公演した”ウインザーの陽気な女房達(シェクスピア)”を楽しんだ日、ロビーで買ったのが、この本。

 私にとっては、仲代の舞台鑑賞は、そう多くはないが、やはり、小林正樹や黒沢明の映画で、そして、NHKテレビで観た、映像俳優としての仲代達矢の印象の方が強烈であるが、本当の仲代の役者としての本領は、妻宮崎恭子と生きる証として築き上げた無名塾との舞台で発揮されるのであろう。この本を読んで、強烈に、そう思った。

 この本は、”結核というハンディを背負っている、学歴もなく、実績もなく、役者としての才能も全く未知数の”売れない役者に、恋をし人生を捧げた最愛の妻への鎮魂歌でもあるが、二人三脚で歩いた二人の波瀾万丈の人生と激しい芸術への情熱が胸を打つ。NHKの「心の旅」で、英国最南東端のランズエンドの海に突出したミナック・シアターで仲代にシェクスピアの一くさりを演じさせていた元気な頃の宮崎恭子を思い出しながら読んだ。

 この本には、宮崎恭子との生活以外にも、仲代自身の生い立ち、思い出の記もあり、貧しかった幼き頃からの心象風景も含めて語られていて、人間仲代達矢の実像が浮かび上がってくる。シェクスピア劇等のヨーロッパ劇も、新世界のアメリカ劇も、そして、現代劇も時代劇も、どんなドラマを演じさせても格調の高い舞台を作り上げてゆく希有な大型俳優の姿が清々しい。 

 

 


 

仲代達矢 動画


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