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どくとるマンボウ青春記 (新潮文庫)
著者自ら「珍しく陰鬱な書き出し」と述べているように、他の「どくとるマンボウ」シリーズのようなユーモアを前面に押し出した作品とは異なり、著者の青春時代をほろ苦く書き綴ったもの。勿論、部分的に例の通りの言葉のギャグも見られるが、青春時代特有の感傷と茂吉を父に持つという立場でやはり文学の道を進もうとする著者の苦悩が読む者の心を打つ。「どくとるマンボウ」シリーズの代表作と言って良い。

前半は旧制松本高校時代の喧騒に満ちた学校生活を中心に描かれる。友人達との交流は、いつもの通りにユーモアたっぷりに語られる。友人の質問に韜晦戦術を取る面白い描写もある。私(50才)も旧制高校の事は良く知らないが、バンカラという言葉がピッタリの雰囲気だ。しかし、一人になると孤独なのだ。いつしか文学の道を志していく。

大学(奇しくも私の先輩)に入って文学クラブに入るが、その活動内容に失望し孤独感が高まる。旧制高校時代の喧騒と打って変って沈鬱なムードが漂う。そして、帰省する主人公のカバンの中には「幽霊」の原稿が。青春時代、誰もが経験する希望と絶望とが交錯する様子を程良いユーモアを交えて綴った青春エッセイの傑作。


 

楡家の人びと (上巻) (新潮文庫)
 医師・楡基一郎が、その野心を原動力として楡家の隆盛を作り上げ、そして次の世代も更なる発展を目指すが…。稀有な人材の宝庫である楡家であっても、時代の大きな流れには逆らえず、少しずつ衰退していく様が、北杜夫独特のユーモアと共に描かれます。ユーモアがなければただの栄枯盛衰物語となってしまうところが、北杜夫のユーモアによって読みやすい作品になっています。これはネタバレになるかもしれませんが、物語の最後では楡家の生き残りが必死にもがいて生きようとする様で終わるのが、何とも救いがあるようで、やはり悲しい結末です。

 

どくとるマンボウ昆虫記 (新潮文庫)
 どくとるマンボウ北杜夫氏のファンは、文学作品を好む「幽霊派」と
エッセイを好む「マンボウ派」に分かれるという。
 レビュアーは初めて読んだ北杜夫作品が本書であったので、以後マン
ボウ派となった。

 マンボウ氏は子供の頃病を得て入院し、そのとき昆虫図鑑を眺めて過
ごしていたことで昆虫に目覚め、やがてカナブンブンを特に好むムシヤ
(虫屋=昆虫採集家・マニア)になったという。

 そんな虫の話もさることながら、航海記で全開だったホラ話がここで
も読める。レビュアーは小学生の頃にこれを読んで、ムシヤにならず雑
学に興味を示すようになってしまった。
 実はこれらのホラ話こそが、マンボウ氏のユーモアはもちろん博識さ
を物語るものだということに気づいたのはずっと後のことである。
 「医局記」に出てくる、博学だが決してひけらかすことのない先輩の
姿がマンボウ氏とダブって見えたのであった。


 


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徹子の部屋 08/05/12 3/3



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