埴谷雄高独白 死霊の世界(21)
死霊〈1〉 (講談社文芸文庫) |
1巻は探偵小説なので面白い。
それ以後の巻は、思考を強制する呪文、そしてその思考の継続を受け継げさせるための遺言のような感じ。 そんな書が文庫になってしまうのは、悲しいというか社会の終焉さえ感じさせる。 存在というものに、秩序や整合性や必然性を感じるか、意味の無意味性を追求するか、問い自体の空虚を感じるか、いずれにしても、人間の感覚に根ざしている点で、哲学小説ではなく、おそらくもっと単純で深遠である。 |
死霊〈3〉 (講談社文芸文庫) |
埴谷は好きだけれども、どうしてもドストエフスキーの模倣が多い気がしてたまらない。(勿論埴谷独自の部分もあるけれども)三輪家が象徴としてある。=カラマーゾフ家。両家の父は放蕩者で隠し子がいるところおまけに4兄弟!!≪最後の審判≫と大審問官の酷似。ブントでの殺人・・・といたるところにありますが、これらは埴谷が意図的にドストエフスキーとの対決の為に用いたということにもなるんでしょうけれども、僕の読みが浅いせいかそう感じられない部分もある。なんだかんだ言ったけれども埴谷最高!! |
死霊〈2〉 (講談社文芸文庫) |
この巻は全編白い霧、暗い闇と不透明な靄がかかった背景に包まれている。夏の明るい日差しの下、透明な川の流れに身を任せて主人公を取り巻く人物達が喋り捲る場面さえ、暗い影を感じる。ことに高志が語る過去の同士への制裁、明らかにされる死者の影、付きまとう夢魔の場面はモノクロームの中に閉ざされて読んでいて湿り気さえ感じる。 暗い印象の背景に反して、始終議論に興じている首猛夫やお喋りで作者に翻弄されている読者の代表のような津田夫人はともかく、高志・与志の兄弟を始め、与志の婚約者安寿子や寡黙な黒川までがよく喋る。登場人物が各々の思いを抱えて明らかにしようと会話が進むため、死霊(1)に比べて物語が解り易く面白い。(1)で尻込みしてしまった人にもお勧め。 |
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