Story Seller (新潮文庫) |
◆「玉野五十鈴の誉れ」(米澤穂信)
▽あらすじ 純香(「わたし」)は、高大寺の旧家・小栗家の一人娘。 純香が十五になった日、小栗家の全てを支配する 封建的な祖母が、純香に一人の使用人を与えた。 その使用人は、玉野五十鈴といい、純香と同い年の少女だった。 二人は読書を通じて親交を深め、純香が大学に進学する 際には、一緒に高大寺を出て、下宿生活をすることになる。 しかし、思いがけない事件により、純香と五十鈴の 幸福な日々は、突然終焉を迎えることになった……。 ▽感想 終始、純香の一人称で進行していく本作の語りの形式は、 横溝正史「七つの仮面」における〈文体の不徹底〉の改善 を企図して選ばれたものだそうです。 ただ、物語そのものの直接的なモチーフは、タイトルである 「〜の誉れ」が示すように、《ブラウン神父もの》の某作です。 (作中において、ヘンリー・ジャクスンやジーヴス といった 名給仕&名執事の名前があげられているのにもニヤリ) 主人である純香に対し、使用人である五十鈴が忠義を示すために行った 衝撃的な行為が明かされる結末は、二人の麗しい関係性とのコントラスト ゆえに、一層の戦慄を呼び起こすものとなっています。 |