iBT No.9 閉鎖病棟
インターセックス |
帯には何も書かれていませんが、6年前の問題作「エンブリオ」の続編です。単体で読むとちょっと消化不良ぎみになります。
前作の被害者の一人、小島加世の友人の女医がサンビーチ病院に赴任することになり、再び運命の歯車が回り始めるという展開。前作は産婦人科医の岸川よりの視点で記されていましたが、今回の視点は女医よりになり、また彼女の専門がインターセックスであることから、産科医療をより広い視点で見る作品になりました。一応前作でそのままだったミステリー的な部分は、やっと終結を迎えます、この作者らしく、豪華な病院の描写や海外でのディナーの描写の方が詳細で、謎解き部分はややあわててまとめた印象も。前作にあったピカレスクロマン的な魅力は半減しています。 |
閉鎖病棟 (新潮文庫) |
精神的障害を持っている人に対する我々のイメージは「怖い」「危ない」等のマイナスの部分が圧倒的にあります。当然、精神に障害があるために健常者には考えられない行動を起こしたりするのですが、彼らが常時そのような精神状態ではないこと、そして精神病は治療によってある程度抑える事が出来るということを本書により知りました。また先天的な障害者と後天的な障害者とでは大きく違いますし、我々も外的なプレッシャーや肉体的恥辱を与えられる事でいつ何時そのような精神状態に陥るか分からないのかもしれないと感じました。本書にはそのような精神病患者の日常が描かれています。それはもしかしたら健常者の社会よりも純粋でより人間らしい人間の集まりであるように感じます。自分の精神状態に負い目があり、自分の起こした過去の間違った行動に対し後悔があるからこそ、彼らはより人間らしい精神状態を保つことが出来るのかもしれません。彼らの日常はこのような小説を通してでないと知ることが出来ません。その意味でも本書の役割は非常に大きいと思われます。 |
エンブリオ (上) (集英社文庫) |
世の中には生まれる子供と同じ数、そしてそれ以上の胎児が闇に葬られる。
その胎児を使い、難病を治し、美容クリームを作る。 又、死人の卵巣からエンブリオを作り出し体外受精を行い、不妊治療を行ったり、男性の出産を実現させようとする。 命の誕生という最も崇高な行為を自ら操ろうとする主人公岸川はまさに不遜で悪魔のような人間である。 しかしそういった闇の部分に大いに魅せられる。 倫理や宗教観など命に関わる問題には多くのタブーがある。そんなタブーをもろともせず、研究を推し進め、そのためには手段を選ばない主人公をどう見るか、それによってこの作品の評価も変わってくるだろう。 |
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