【ダメ金】アルメニアンダンス・パートⅠ【一年目】
ブラスの祭典 |
中・高と吹奏楽部に所属していました。また、佐渡裕さんの指揮の下、シンフォニーホールで、合唱団員として歌った経験もあります。このCDをいろいろな期待を込めてじっくりと聴きました。 交響楽団が上で、ウインド・オーケストラが下、という序列を持っておられる方がいますが、楽器群の構成の違い、音色の差違、音圧即ち音の迫力、といった個性をもう少し考慮して聴いてみると新たな音楽世界の広がりとして理解できます。佐渡裕のねらいもそのシエナ・ウインド・オーケストラの特徴と個性を引出すことにあると感じました。 まず、シエナ・ウインド・オーケストラの技術水準に感心しました。パートバランスも、しっかりしていますし、とてもよく鳴っています。ウインド・オーケストラ特有の部厚い密集和音は、音楽が進むにつれ万華鏡のように変化していきます。若さ溢れる演奏者集団ですので、佐渡裕のめざす音楽性ととても相性が良い感じがしました。 ジョン・バーンズ・チャンス作曲の『朝鮮民謡の主題による変奏曲』を始めて聴きましたが、良い音楽ですね。有名な「アリラン」の旋律をモティーフにして、アメリカ人が見た、東洋のイメージがよく出ていて、印象に残りました。交響楽団でティンパニー奏者を務めていた作曲者ですので、途中木魚まで入っているパーカッションの多彩さはこの曲の特徴なのでしょうね。シエナ・ウインド・オーケストラのとても洗練された演奏と共に、気に入りました。 佐渡裕の師匠であるバーンスタイン作曲の『シンフォニック・ダンス ウェスト・サイド・ストーリーより』も、破綻のない立派な音楽でした。アンサンブルの高水準を確認した思いですが、もう少し荒くはじけても良かったかなと思います。クラシック・テイストではなく、ジャズ・テイストの曲ですから、もっともっと躍動感があると原曲の持つ味わいと個性が引き立つように感じました。もっとも、この演奏もアマチュア・バンドのお手本となるのには違いありませんので。 ラストの『星条旗よ永遠なれ』のアンサンブルは流石でした。正統派の演奏で、今まで聴いた演奏の中で一番良かったと思いました。フルート奏者だった佐渡裕の思っている『星条旗よ永遠なれ』を聴かせてもらった感があります。繰り返しの後の演奏は、天国のスーザに聴いてもらいたい感じがしましたね。 |
ハチャトゥリアン:管弦楽作品集(9枚組) |
かなり粗挽きなリズム、そしてキレキレの野蛮な演奏してます。 しかし、今まで聴いたどの演奏よりも印象深く、感動的でした。 9枚組でこのお値段… いい世の中になったものです。 |
コーカサス国際関係の十字路 (集英社新書 452A) (集英社新書) |
4月、旧ユーゴ諸国の紛争地域を回った。7月には、来年は世界最初のキリスト教国アルメニア、第2のグルジア、そしてゾロアスター教国アゼルバイジャンに行くと決めた。この三国のすぐ北にはあのチェチェンがある。開けて8月、北京五輪開幕の日にグルジアが南オセチアで動き出す。おかげでグルジアは退避勧告になってしまった。そして、ネットで情報を集めれば、今回の南オセチア紛争には多くの政治戦略の動きが窺われる。
前は平和の反面教師としての地域間の民族的、経済的背景を持った紛争について局所的な視点を中心として眺めていたが、現代においてはそれでは十分説明がつかないことがわかる。どうしても大局的な視点が必要だ。しかし、専門的な書はあっても、大局的な視点の良書というのはそうはお目にかかれない。専門化が進んだ現代での一つの弊害だ。そこで本書だが、西欧、ロシア、旧共産圏、中東、米国の5つの政治ブロックの戦略の視点からこの地域の持つ役割が語られている。政治的側面が中心でその次が経済。民族的な分析は政策理解に必要な最小限にとどめられている。本人の取材内容も盛り込みながらバランスよくまとめられている。著者はこの複雑な地域をうまく説明しきれていないと書いているが、こんな小冊子にここまで無駄なくバランスよく書かれた書はそうはないだろうし、簡単にできることとも思えない。渾身の一冊と思う。 著者は若いが内容はしっかりしている。読者はあとはネット上の情報を吟味しながら個々の事象を把握していくことになろう。本書は現時点ではその最高のパートナーといえる。おかげで、いろいろな英語の情報の理解も容易になったし、その裏の複雑な背景が見えるようになった。グルジアやチェチェンだけに興味がある人には扱いが不十分に思えるかもしれないが、これはこの書の視点からして仕方がない。むしろ全体像を理解してとらえられる点で活用してほしい。 それにしてもまるで紛争を予期したかのような刊行。それほど現代は紛争の火種をあちこちに抱えたまま流れていくということなのだろう。 なお、本書ではロシアの政策上、アブハジアと南オセチアの独立までは認めないとなっているが、8/26にメドヴェージェフは承認に署名したと発表。ロシアの方針に変化が起きているのかもしれない。 |
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